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ムーン

MOON.
メーカー:タクティクス
 母の死の謎を知るために、また肉親を取り戻すために、カルト教団へと乗り込む3人の少女を描いた18禁AVG。
 筆者はかなり好きなゲームだが、正直、佳作ではあるが良作とは言い難い、とも思う。というのは、「カルト教団=セックス教団」というのは安直だとも思えるし、また、ビジュアル的にも若干拙く、どこかで見たようなデジャブを感じるものも散見されるからでもある。

 更に内容的な不満点を具体的にいくつか列挙すると、
・晴香シナリオのボリュームが他に比して物足りない。デモ版に存在するような、「兄との過去の邂逅」を描いていればずいぶん深みが増したと思うのに、結果として中途半端になってしまったように思える。
・前項目と被るが、デモ版に収録されているのに製品版に収録されていない要素が多い。その為、デモの「作品としての完成度」が正直、製品版の完成度を凌駕してしまっている。
・郁未の正体が掴めない。というのは、ネタバレになるが、作中で語られる郁未の過去の半分は虚構なのだ。そして、その否定されてしまう部分を埋める情報が結局提示されないので、筆者は空洞感を抱いてしまった。
・高槻など、このゲームに出てくる男は「教団を利用してやりたいようにやっている」人間ばかりで、本当の意味での「信者」が登場しない。シナリオ的にその要素を入れ難かったのかも知れないが、宗教組織の本質的な恐ろしさが「盲信」である以上、その要素を廃してしまった今作の教団「FARGO」は、宗教組織としてリアリティを欠いてしまった感がある。
 ――おそらく、このあたりの「バランスの悪さ」がこの作品の欠点なのだろう。

 だが、欠点は多いものの、それでも惹かれてしまう…そういう作品でもある。不思議な印象を持つ名作として、筆者を初めとする多くの人の記憶に残されることだろう。


 麻枝シナリオは、乱暴な言い方をすれば「誰がそんなネタ気付くねん」というギミック…が多い割にさらっと流してしまうので、余計に全貌を掴みにくい…って要素はあるかなぁと。『MOON.』の場合は「あぁなるほど」と思えた(これが合っているかどうかはまた別として)人が相当少数で、大多数の好意的な感想はというと「なんやわからんがすごい」という印象だったのではと思う。で、「なんやわからんがすごい」のは宗教も同じで、そういった意味では宗教自身が持つカリスマ性をゲームの印象に取り込むことに成功し(かけ)た作品なのかも知れない。

by buisochan | 2005-07-08 09:30 | Windows  

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